Lillies and Remains/Superior

初めまして、GonZと申します。30代子持ちのその辺にいる洋ロック好きの凡夫です。

この度紀元前より敬愛しているロックバンド Lillies and Remainsがひっさびさに新譜を提供してくださり、テンションがバチクソに鰻登りオーラスダブル役満デバサイ状態。その昂りから、地震を自身のパンチで止めることに一切の疑問も持たない地上最強の生物範馬勇次郎がまさかの麻酔銃でハントされた瞬間に感じたであろう奇妙な恍惚感に勝るとも劣らない境地に達してしまったため僭越ながら新作4thアルバム"Superior"のレビューを書かせていただこうと思います。よろしくお願いいたします。
 
 
まず初めに Lillies and Remains(以下L&R)について軽く触れようと思います。
 
日本は京都発。2007年、Kent氏を中心に結成。現在は幾度かのメンバーチェンジを経て正式メンバーはKent(Vo.G)、Kazuya(G)の2名編成。(ライブ時はThe Novembers 高松氏等をサポートメンバーに迎えて活動しています)
ニューウェーブ、ポストパンク、ネオアコを主軸にし時折メタルのエッセンスも注入してくるクールなロックバンド。それはもうちょークール。ちょーロマンティック。知る人ぞ知る猛烈にイケてるジャパニーズロックバンドでございます。
 
 
各曲感想(お気に入り度 ★1〜5 ☆は0.5)
 
#1 Superior (★★★★)
タイトルトラック。16ビートにガッツリ歪んだメタリックギターリフが乗っかり元気よく開幕。その硬質なギターサウンドとは裏腹に意外にもポップでポジティブな印象のメロが魅力。L&R流アンセムソングのようにも聴こえるし、ラスサビを高らかに歌い上げアルバムに対する期待が俄然高まっていく。余談ですが歌い出しがゴリエのペコリナイトっぽくてちょっと懐かしい気持ちになりましたw
 
#2 Muted(★★★★★)
ぶっといベースと適所に鋭く挿入されるギターが光るアップテンポキラーチューン。音数としてはあくまでもミニマムなポストパンク然とした構成ながら、かつてないダイナミズムを感じ非常に面白い。Oh Yeah Yeahと歌いながらもどこかネガティブなオーラを醸し出していて、一曲目と同様にカオスな魅力を漂わせる。今作屈指の緊張感を纏っておりソリッドなL&Rの帰還に嬉しさが止まらない。
 
#3 Neon Lights(★★★★★)
先行リリース曲。初期Bloc Partyの名曲Two More Yearsを彷彿とさせるような疾走感溢れるニューウェーブナンバー。プレステの起動音みたいなスタートからギターコードが鳴った瞬間、あぁー、絶対名曲ですやんコレって確信した。サビ後半のスウィングするリードギター、小節間のさりげなく魅せるハイハットが◎
あと、ベースライン。とにかくベースラインが良すぎて気付くと低音ばかり耳で追ってしまう。そして抑圧された憂いに満ち溢れるメロが本当に秀逸。声高に激情を吐き出すことはないが、誰しもが漠然と抱く悲哀を掬い取るような表現、L&Rのそういったところが実に好きです。個人的にはこれこそエモの極地だと感じる。ベストトラック候補。
 
#4 Everyone Goes Away In The End(★★★★★)
近年のStrokesを想起させるブリブリのシンセベースの上に軽妙なメロが絡む、抜群に明るいエレポップナンバー。曲名から暗い音像をイメージしたが真逆を突かれた。Aメロが特に秀逸で、思わず口ずさみたくなる愛嬌に満ちたメロディーライン。一人でドライブしてる時に聴いたら間違いなく歌い散らかしますw
今作は全編解放感に包まれているがその中でも特に象徴的。アウトロギターも素晴らしい。ベストトラックに選出するかかなり悩みました。
 
#5 Focus On Your Breath(★★★☆)
過去曲You Won't Careをブラッシュアップしたようなミドルテンポナンバー。淡々と展開する前半から徐々に盛り上げる多幸感に包まれたメロとギターが特徴。間違いなく良曲ではあるんだけど他の楽曲の個性が強すぎて少し埋もれてしまっている印象。でも、好きです◎
 
#6 Spinning Away (★★★☆)
今作唯一のカバー曲。原曲はBrian Eno&John Cale、1990年リリース。L&Rが手掛けるカバーは原曲に忠実or大きく改変するパターンに分かれますが今回は前者。涼しげにリフレインするバッキングギターと優しげなアンビエント的音響がうまく調和している。アルバムの箸休め的存在として適切な配置だとは思うが個人的には過去作のAlone Again Orのような大胆なアレンジを聴きたかった感もある。ただ、アルバムのレトロフューチャー的な世界観としっかりマッチしている辺り流石の選曲です◎
 
#7 Greatest View(★★★★☆)
先行リリース曲。L&R流アップテンポネオアコナンバー。前作収録のLike The Way We Were系統。The Smiths風の瑞々しく光るようなリードギターが特徴。イントロ良すぎ。2:00辺りのメロが最高にエモ。学生時代、クソ暑い夏の放課後に荷台を折り曲げた頭の悪そうなしょぼいチャリンコで彼女と2ケツしてた事を思い出しましたw
 
#8 Falling(★★★★)
先行リリース曲。Greatest Viewと対をなすような冬の夜という感じのシティポップ調ナンバー。イントロのクールな展開と裏腹にすかさず可愛らしいシンセが入ってきて初めて聴いた時ちょっと笑いましたw 跳ねるベース、ドラムフィルインが一々気持ち良い。L&Rの中でも屈指のポップさを持つメロディーが特徴。欲を言えばアウトロにもう一捻り欲しかった感はあります。
 
#9 Pass Me By(★★★★★)
過去参加コンピレーションアルバムに収録されたPassing Meという曲のアレンジver.
あまりにアレンジが効きすぎてギターリフが鳴るまで完全新曲だと思っていた。冒頭のシャウトからジャングリーなブレイクビーツが挿入された瞬間テンション上がりまくり。過去の名曲Broken Receiverを大きく更新したようにも感じるし、Squarepusher風というか、古いB級SFアクションで光線銃を片手に敵戦艦のダクトに潜入していくシーンに使われそうなレトロで怪しげな魅力が満載。他にも良曲が多数あることから意見は様々だと思いますが、シンプルに1番ゾクゾクきたので私はこの曲をベストトラックに推します。最高!
 
#10 Passive(★★★★)
Sonic Youth風の乾いたバッキングギターが特徴の8ビートショートチューン。作中最もストレートなロックサウンド。小難しいことはしなくてもシンプルにカッコいい曲が作れるんだぜと言わんばかりのある意味作曲能力の高さが際立つ楽曲。アウトロのギターで盛り上げあっさり終わる感じが潔くて好印象。
 
#11 New Life(★★★★☆)
本編ラストを飾るミドルテンポナンバー。ありそうで無かったタイプの曲。展開が面白く、加速すんの?しないの?どうすんの?みたいな感じで終始リズムで遊び最後は冒頭曲Superiorのフレーズを織り混ぜ爽やかに閉幕。現在のバンドのムードを表す未来へのポジティブさを感じる。リリーズのアルバムラスト曲は名曲揃いなんですが今回も案の定、でしたね◎
 
 
アルバム総評
 
Lillies and Remains/Superior(★★★★★)
 
さてアルバムの総評ですが、文句なし。文句なしの最高評価です。前置きとして過去アルバムの変遷を先に書くと、
ソリッド&ダークな1st Part Of Grace
ストレンジ&エッジーな2nd Transpersonal
リラックス&ノスタルジー
3rd Romanticism
を経て今作4th Superiorに至りました。
 
個人的には1st、2nd時期のスピード感、緊張感に満ちた楽曲が好みでしたので、前作Romanticismは良作ではあったものの、やや物足りなさも否めないといった印象でした。
今作のリリースが発表され、期待と同時にあの頃の尖ったリリーズはもう聴けないのかな…と一抹の不安を抱えていましたが、蓋を開けてみればそんな思いも杞憂でしかなく、私が1番好きだった2ndをも軽々と超えて行ってしまったと感じました。
今作の特徴としては全体的にアップテンポの楽曲が多くダレるポイントが極めて少ないということと、初期のスピード感やキレを取り戻しそこからさらにリミッターを取っ払い振り切った解放感を感じる事が出来るという点です。
前作もリラックス由来の解放感はあったのですが、エネルギーとしてはあくまでも低出力。しかし今作はアクセルベタ踏みフルスロットルな出力を持ってアグレッシブに解放のカタルシスを提供してくれています。
 

 
楽曲の幅も大きく広がり音選び、音作り、各アレンジどれを取っても非常に多彩で上質。アルバムタイトルであるSuperiorという言葉を体現するが如く極めて高クオリティなアルバムに仕上がっており、過去最高傑作と呼んで全く差し支えない出来栄えかと思います。
前作から9年という期間が空き、当時1歳だったうちの長男が10歳になってしまいましたwが、このバンドが好きで良かったなと心の底から思える作品です。ありがとう、Lillies and Remains。
 
 
 
 
 
 
終わりに
 
以下は完全な主観、憶測混じりの個人的な思いになります。
今回素晴らしいアルバムを提供してくれたL&Rですが結成から現在に至るまで様々な紆余曲折があったことかと思います。
結成当初、Kent氏が海外のチャートに普通に食い込むバンドになりたいと語っていたと思いますが、結果としてその野望は実現に至っておらず、現在は社会人生活、音楽活動と二足の草鞋だと思われます。ただそれはバンドの実力不足というよりはマスにウケにくいクールな音楽性(Interpolが日本人にウケないような感じ)、生まれや運や巡り合わせに依る部分が大きかったのではないでしょうか。個人的には、デビューEPの頃から海外のトップバンドと比べても全く遜色ない楽曲のクオリティを持っていると感じており、今も尚その思いは不変です。高い志、センスを持ち併せながらも、なかなか正当な評価・人気を獲得出来ず次第に活動ペースが低下していく様に、ファンとして悔しさ、やるせなさを抱いていた時期もありました。
しかし結果として商業主義に走らず自らの作りたい楽曲を思うがままに、社会生活と並行しマイペースに活動するよう至ったことは、L&R、リスナー双方にとって決して悪くなく、寧ろ相当に良い現在地なのではないかと感じています。大衆ウケせずとも決して憂うことはなく良いものは良い、やりたいから音楽をやる。もうただそれだけで良いのではないかと。長くなりましたがこれからのL&Rの活動を引き続き楽しみにしております。
 
邪ッッッ!!!