Lillies and Remains/Part of Grace

こんばんは、GonZです。

今回は2009年に発売されたLillies and Remainsの1stフルアルバム、Part of Graceをレビューしていこうと思います。

 

各曲感想(お気に入り度 ★1〜5 ☆は0.5)

#1 Argo (★★★★☆)

冒頭から暗すぎる。呪術的とも取れるボーカルから一体どんなアルバムになるんだろうといきなり不安な気持ちにさせてくる。怪しすぎる船出。かなり好きです。

 

#2 The Fake (★★★★★)

カッティングエッジなギターとマシンビート。余りにもクールな一曲、ことベースラインにおいても今作で最もカッコいい気がする。2分7秒あたりからの混沌としたギターソロに痺れる。ベストトラック候補。

 

#3 Poles Apart (★★★★)

ザクザクとしたギターリフにラップ調のボーカルが絡むアップテンポナンバー。イントロ、サビ直前のバラララララと連射するギターが特に好き、欲を言えばギターソロにもう一捻り欲しかったかな。

 

#4 Moralist S.S. (★★★★☆)

デビューミニアルバムのタイトルトラックでもあるこの曲、発売当初アークティックモンキーズストロークス等ポストパンリバイバル全盛期でしたが、当時のムードが色濃く投影されている。1:52のリードギターアレンジが大好き。

 

#5 Alice(★★★★)

アルバム頭からのダークな流れを断ち切るクリーンかつ流麗なインストナンバー。ただ綺麗なだけではなく後半暴れ回るドラム等アレンジの上手さが光っている。

 

#6 Wreckage(★★★★★)

リリーズの楽曲で個人的に最も好きな曲。乾いたバッキングとメロが絶妙に絡み、サビのコーラス&リードギターでエモが振り切れる。当時Bloc Partyのパクリと一部から揶揄されていた気もしますが、今となってはそれもいい思い出。なんとも切ない秋の風が吹き抜けるようなノスタルジー。常に人生の傍に寄り添ってくれるような心の一曲です、ベストトラック候補。

 

#7 Part of Grace(★★★★)

タイトラックでもあるこの曲、意外すぎるほどメランコリックで愛嬌溢れる世界観に少し驚くw  よく聴くとギター、ドラムどちらも凝っていて面白い。

 

#8 Unmade Schemer(★★★★☆)

#5-7のポップな世界観でホッとしたのも束の間、再び怪しくダークな音像に引き戻される。ダビーでダンサンブルなリズムがエッチ。リリーズの中でも他に類似曲が見当たらない異色作、またこの系統作ってくれないかな。

 

#9 Solitude of Vigor(★★★★★)

1番好きな曲は#6ですが、まず間違いなくこの曲がベストトラックでしょう、イアンカーティスも顔負けの圧倒的冷徹、緊張感。曲後半の自我が崩壊していくような展開が凄まじい。このバンドにしか書けない曲だと思います、ヤバすぎる。

 

#10 Sigmablade(★★★★★)

リリーズの中でもベストオブ変態イントロなアップテンポナンバー。ガスマスクを着用した処刑人が脳裏に浮かぶ。作中最もソリッド。息が詰まるような展開からアウトロで一気に解放してくれる。好きゆえに強いて言うなら、アウトロのミュートギターをもう少し主張してくれてもよかったかなと思う。

 

#11 Grind(★★★★☆)

静と動、重厚なメタルリフが光るキラーチューン。暴れ回るリードギターとドラムが最高にかっこいい。昔サマーソニックかなんかの宣伝に使われていたような気がする。ライブで披露してくれると相当にテンション上がります。

 

#12Upsetter(★★★★★)

アルバムラストを飾るネオアコ調のミディアムテンポナンバー。(正確には残り2曲ありますがリミックスにつき割愛させていただきます)哀愁漂うリードギターとメロが素敵。それにしてもVo.Kent氏がこの曲を作曲した歳は確か10代半ばだったと思いますが、改めて恐ろしさを感じる。才気溢れすぎでしょw

 

アルバム総評

Lillies and Remains/Part Of Grace(★★★★☆)

 

一体今まで何回聴いたんだろう。というか評価は余裕で★★★★★なんですが、後に発売される2nd以降の作品と相対的に比較するなら、と言った意味合いです。当時このアルバムは自分の中で本当に革命的で、Bloc PartyのSilent Alarmと同様に最も影響を受けた一枚です。

リリーズ作品群において最もストレートなロックサウンドで、Joy DivisionGang Of Fourなどポストパンクレジェンド達のサウンドを現代風に解釈、ダークかつポップな唯一無二の作品に仕上げており、私が知る限り現代ロックの中でも指折りのクールネスを誇る一枚です。よろしければチェックしてみてください。

 

https://open.spotify.com/album/0CFCfxGsTTBQRJmO0TVRKq?si=zNd3raEwT8CRoEFeWBtWlQ

 

 

 

 

 

 

https://x.com/f_m_mus1c?s=21&t=ATCJsdfXCQ2Ftf-ugsJQ1g

 

 

 

 

 

Lillies and Remains/Transpersonal

 

こんにちは、GonZと申します。

最近旧友がLillies and Remainsにハマってくれて嬉しい刺激を受けたので、改めて過去作Transpersonalのレビューをしてみようと思います。

 

2011年発売の本作は、1st Part Of GraceからVo.Gt.以外の2名をメンバーチェンジし制作された2ndフルレングス。

発売当初から長らく私の中で1番好きなアルバムとして君臨していた作品で、恐らく1000回以上は再生していますw そんな今作の良さを少しでもお伝えできれば幸いです。

 

各曲感想(お気に入り度 ★1〜5 ☆は0.5)

 

#1 Across The Line(★★★★★)

のっけからこれでもかというくらいぶっ飛ばしているアグレッシブなキラーチューン。激しさで言えば本作随一。メタリックなギターに手数の多いドラムが絡み、シリアスに加速していく。特筆すべきはアウトロで、ベースラインで全てを持っていく感じが斬新かつ非常にかっこいい。今後に期待を持たせるような末尾のリードギターも秀逸。ベストトラック候補。

 

#2 Effectual Truth(★★★★★)

近未来感漂う不思議なニュアンスで歪んだバッキングに、メロディアスなボーカルとリードギターが乗っかる本作の雰囲気を象徴するような一曲。全てのパートに聴きどころがあるが、美麗なサビメロの背後で自在に滑走するリードギターが特に素晴らしい。

 

#3 Broken Receiver(★★★★★)

はい、まずタイトルからして好きですw

「ダサカッコイイ音楽が好き」とVo.Kent氏が語っていたと思いますが、その言葉を体現するかのようなトラック。Bメロ(サビ?)後のリードギターが実質サビの役割を担っている。#1と同等かそれ以上にアウトロがよく出来ていて、ミュートギターとメロのシナジーに初めて聴いた時鳥肌が止まなかった。ファンからも高い人気を誇っていると思われ、Liveで頻繁に披露されています。

 

#4 You're Blind(★★★☆)

80'sへの恋慕を感じるミニマルかつモノクロなポストパンクナンバー。メロディーのクラシカル感が強く、正直当時はそこまで好みでは無かったのですが、改めて聴き直すと歳を重ねたせいか好印象を受けました。いぶし銀。渋すぎる。

 

#5 Obsession(★★★★☆)

Sonic YouthのUnmade Bedを想起させる、仄暗いミディアンテンポナンバー。ダビーなベースがセクシー。起伏は少ないのですが、聴いていてそろそろオカズが欲しいなと思ったタイミングで挿入される2:28の間奏ギターが憎い。しっかりと痒いところに手が届いている。

 

#6 Injustice(★★★★★)

#5に引き続き物憂げな印象のニューウェーブナンバー。"憂い"という表現が本当によく似合う。リズムは軽快ながらもメロとリードギターが胸を締め付けてくる。さりげなく凝ったドラム、効果的に使用されるクランチギターもナイス。

#1.2.3.11.12辺りも甲乙つけ難い素晴らしさですが、私はこの曲をベストトラックに推します。

 

#7 Human Intellect#2(★★★★☆)

ミニアルバムMeruに収録されていた曲のアレンジver.  リズム隊の厚みが増している。今作で唯一多幸感を得られる楽曲で、リリーズのポップセンスを再確認出来る。ラスサビ前の3:15に一瞬挿入されるクランチギターのアイデアが新鮮。

 

#8 Avijja (★★★★)

#7のハピネスな雰囲気から一転し、作中最もダークなプログレナンバー。評価が非常に難しい。迷宮都市然とした退廃的な空気感が特徴。救いのない感じに聴いていて少し息苦さを覚えてしまうこともあるが、曲順においてうまく変化を付けることに成功しているとも言えるでしょう。

 

#9 Peak Experience(★★★★)

重厚な#8から解放されほっとした気持ちにさせてくれるインストアンビエントナンバー。クリーンで静謐な雰囲気が素敵。当時もう少し長尺で聴きたいなと思っていましたが、後ほど発売されたミニアルバムLostに本曲のLong Ver.が再収録されています。嬉しみ。

 

#10 Lucid(★★★★)

ギターの音数を最小限に抑えつつ、リズム隊が暴れ回るアッパーなドラムンベースナンバー。うねりにうねったベース、ファンキーなメロが面白い。細かい部分ですと、歌詞のduties、ladderという響き、3連ハイハットのビシバシ感が癖になる。

 

#11 Aggregate Our Life(★★★★★)

#2と同じく、本作のストレンジな雰囲気が前面に出ているアップテンポナンバー。マニアックな話ですが、この曲はリリーズが渡英した際に現地録音した会場限定シングルに収録されているthere is new lifeという曲のアレンジver.です。

奇怪に絡みつくユニゾンギター、サビ直前のどこに誘うんだよって感じのメロ、よくこんなの考えつくなと感心します。準ベストトラック。

 

#12Trans(★★★★★)

本作ラストのスロウテンポナンバー。サビ後のギターが特に好きで、The CureのJust Like Heavenからインスピレーションを受たのかなと勝手に想像しています。アルバム最終曲として余韻が素晴らしく、どこか輪廻をモチーフとしたような印象を受けていましたが、前述のギターに加え、幾重にも重なるコーラス、締めの荘厳なハウリングがそれを生み出しているように思えます。

 

アルバム総評

 

Lillies and Remains/Transpersonal 

★★★★★

 

発売から10年以上経ちますが、やはり今でも文句なくおすすめの一枚。大学生の時分、発売日に満を持して渋谷のタワーレコードでヘッドフォンを鷲掴みにし、#1-3を通して試聴した時の衝撃を未だ鮮明に覚えています。

前作と比べシンセサイザーの使用頻度が高まり、クールな雰囲気はそのままに曲の表情が多彩になったと感じる。やや拙かった演奏面もリズム隊を刷新したことで向上しており、現在もサポートメンバーを務めるkousuke氏のドラムが特に素晴らしい。音楽性としてはポストパンク→ニューウェーブへより接近したと言えるかもしれません。ジャンル的にとっつき辛さを感じる方も居るかと思いますが、リリーズ持ち前のポップセンスによって楽曲自体は非常に聴きやすく、本作もその例に漏れません。(低音ボーカルに関して好みは分かれると思います。が、私は好きですw)

入門盤としても適していると思いますので、よろしければチェックしてみてください。

 

https://open.spotify.com/intl-ja/album/5Q581UEF6wjlkNUzK1EZOB

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Lillies and Remains/Live@WWW X

Lillies and Remains
2023.10.21 Live@渋谷WWW X
 
 
こんにちは、GonZと申します。

昨日超久々にリリーズのライブを観に行ってきたので感想などかるーく記録しておこうと思います。

自分事ですが、家庭を持ってから10年以上経ち日々なんやかんやと忙殺されていてライブハウスからすっかり足が遠のいてしまっていました。
久々にプライベートで来た渋谷は、最早駅の出口さえ忘れている有様で若者の多さに面食らいながらもセンター街を通り抜けなんとか会場に到着。

軽く息切れしながら入り口を昇降し、ライブフロアへ。バーカウンターでモスコミュールを頂きようやく一息つけました。普段居酒屋に行くとレモンサワーやらハイボールばっかり飲んでしまいますが、たまーにモスコミュール、ジントニックあたりを飲むとやたら美味しく感じます。

バーカウンターのすぐ脇にステージ入り口があり、開演時間ギリギリでしたのでサクッと酒を流し込みいざ中へ。見た感じお客さんの入りも上々で8-9割くらいは埋まってそうな印象。客層はアラサー〜アラフォーくらいまでの方が多く、中には50代に見える方もチラホラおり面白いファン層だなと思いました。若いファンばかりで浮いたらどうしようと軽く心配しながら参りましたが、みなさん仲良く年を重ねていっている様子です。
アルバムSuperiorの出来が凄まじく良かったため大いに期待が高まる中、ライブスタート。
 
セットリスト
(曲順があやふやでしたのでXでファンの方がアップされてたのを参考にさせていただきました)
 
Like The Way We Were
Muted
Broken Receiver
Neon Lights
Everyone Goes Away In The End
Greatest View
Falling
The Fake
Pass Me By
Sublime Times
Close To Me
Wreckage
Final Cut
Focus On Your Breath
Passive
Moralist S.S
Superior
Body
This City
New Life
 
 
 
以前リリーズのライブを見てから10年くらい経ってしまってるのでアレですが、格段に演奏が良くなっていると感じました。
特にKazuyaさんのギター、あくまで個人の感想で恐縮ですが昔は線が細くもっとアタック感が欲しいと思っていましたが、とてもクッキリと存在感のある音に変化しており驚きました。ライブ通して誇張なしにバンドメンバー全員が最高のサウンドを提供してくれたのですが、Broken Receiverのバッキングギター、Pass Me By のシンセ、Sublime Timesのベースライン、Wreckageのサビコーラス、This Cityのアウトロドラム、この辺りが特に印象に残りました。
 
私的にWreckageがリリーズの中で1番好きな曲でして、生で浴びる美しいサウンドと共に学生時代から現在に至るまでの様々な思い出がフラッシュバックし非常に胸に来るものがありました。
 
サウンドもさることながらKentさんのMCも軽妙さが素晴らしく、シュールな笑いを堪能させて頂きましたw
今回久々にツアーをやって楽しかった様子で、来年何かしらリリースしたいと嬉しい予告もありました。
 
今回ライブに参加して改めて思ったのは、時間の経過と共に環境や自身が変化していく中、最も好きなバンドが変わらず存在してくれている有り難さです。10代の頃にリリーズの音楽と出会い、もう30代半ばになってしまいましたがやはり私の中では彼らの音楽が1番肌に合う。ここまで来たらきっとこれからもそうでしょう。今後の活動も楽しみです。ではまた☺︎
 
 
 

Lillies and Remains/Superior

初めまして、GonZと申します。30代子持ちのその辺にいる洋ロック好きの凡夫です。

この度紀元前より敬愛しているロックバンド Lillies and Remainsがひっさびさに新譜を提供してくださり、テンションがバチクソに鰻登りオーラスダブル役満デバサイ状態。その昂りから、地震を自身のパンチで止めることに一切の疑問も持たない地上最強の生物範馬勇次郎がまさかの麻酔銃でハントされた瞬間に感じたであろう奇妙な恍惚感に勝るとも劣らない境地に達してしまったため僭越ながら新作4thアルバム"Superior"のレビューを書かせていただこうと思います。よろしくお願いいたします。
 
 
まず初めに Lillies and Remains(以下L&R)について軽く触れようと思います。
 
日本は京都発。2007年、Kent氏を中心に結成。現在は幾度かのメンバーチェンジを経て正式メンバーはKent(Vo.G)、Kazuya(G)の2名編成。(ライブ時はThe Novembers 高松氏等をサポートメンバーに迎えて活動しています)
ニューウェーブ、ポストパンク、ネオアコを主軸にし時折メタルのエッセンスも注入してくるクールなロックバンド。それはもうちょークール。ちょーロマンティック。知る人ぞ知る猛烈にイケてるジャパニーズロックバンドでございます。
 
 
各曲感想(お気に入り度 ★1〜5 ☆は0.5)
 
#1 Superior (★★★★)
タイトルトラック。16ビートにガッツリ歪んだメタリックギターリフが乗っかり元気よく開幕。その硬質なギターサウンドとは裏腹に意外にもポップでポジティブな印象のメロが魅力。L&R流アンセムソングのようにも聴こえるし、ラスサビを高らかに歌い上げアルバムに対する期待が俄然高まっていく。余談ですが歌い出しがゴリエのペコリナイトっぽくてちょっと懐かしい気持ちになりましたw
 
#2 Muted(★★★★★)
ぶっといベースと適所に鋭く挿入されるギターが光るアップテンポキラーチューン。音数としてはあくまでもミニマムなポストパンク然とした構成ながら、かつてないダイナミズムを感じ非常に面白い。Oh Yeah Yeahと歌いながらもどこかネガティブなオーラを醸し出していて、一曲目と同様にカオスな魅力を漂わせる。今作屈指の緊張感を纏っておりソリッドなL&Rの帰還に嬉しさが止まらない。
 
#3 Neon Lights(★★★★★)
先行リリース曲。初期Bloc Partyの名曲Two More Yearsを彷彿とさせるような疾走感溢れるニューウェーブナンバー。プレステの起動音みたいなスタートからギターコードが鳴った瞬間、あぁー、絶対名曲ですやんコレって確信した。サビ後半のスウィングするリードギター、小節間のさりげなく魅せるハイハットが◎
あと、ベースライン。とにかくベースラインが良すぎて気付くと低音ばかり耳で追ってしまう。そして抑圧された憂いに満ち溢れるメロが本当に秀逸。声高に激情を吐き出すことはないが、誰しもが漠然と抱く悲哀を掬い取るような表現、L&Rのそういったところが実に好きです。個人的にはこれこそエモの極地だと感じる。ベストトラック候補。
 
#4 Everyone Goes Away In The End(★★★★★)
近年のStrokesを想起させるブリブリのシンセベースの上に軽妙なメロが絡む、抜群に明るいエレポップナンバー。曲名から暗い音像をイメージしたが真逆を突かれた。Aメロが特に秀逸で、思わず口ずさみたくなる愛嬌に満ちたメロディーライン。一人でドライブしてる時に聴いたら間違いなく歌い散らかしますw
今作は全編解放感に包まれているがその中でも特に象徴的。アウトロギターも素晴らしい。ベストトラックに選出するかかなり悩みました。
 
#5 Focus On Your Breath(★★★☆)
過去曲You Won't Careをブラッシュアップしたようなミドルテンポナンバー。淡々と展開する前半から徐々に盛り上げる多幸感に包まれたメロとギターが特徴。間違いなく良曲ではあるんだけど他の楽曲の個性が強すぎて少し埋もれてしまっている印象。でも、好きです◎
 
#6 Spinning Away (★★★☆)
今作唯一のカバー曲。原曲はBrian Eno&John Cale、1990年リリース。L&Rが手掛けるカバーは原曲に忠実or大きく改変するパターンに分かれますが今回は前者。涼しげにリフレインするバッキングギターと優しげなアンビエント的音響がうまく調和している。アルバムの箸休め的存在として適切な配置だとは思うが個人的には過去作のAlone Again Orのような大胆なアレンジを聴きたかった感もある。ただ、アルバムのレトロフューチャー的な世界観としっかりマッチしている辺り流石の選曲です◎
 
#7 Greatest View(★★★★☆)
先行リリース曲。L&R流アップテンポネオアコナンバー。前作収録のLike The Way We Were系統。The Smiths風の瑞々しく光るようなリードギターが特徴。イントロ良すぎ。2:00辺りのメロが最高にエモ。学生時代、クソ暑い夏の放課後に荷台を折り曲げた頭の悪そうなしょぼいチャリンコで彼女と2ケツしてた事を思い出しましたw
 
#8 Falling(★★★★)
先行リリース曲。Greatest Viewと対をなすような冬の夜という感じのシティポップ調ナンバー。イントロのクールな展開と裏腹にすかさず可愛らしいシンセが入ってきて初めて聴いた時ちょっと笑いましたw 跳ねるベース、ドラムフィルインが一々気持ち良い。L&Rの中でも屈指のポップさを持つメロディーが特徴。欲を言えばアウトロにもう一捻り欲しかった感はあります。
 
#9 Pass Me By(★★★★★)
過去参加コンピレーションアルバムに収録されたPassing Meという曲のアレンジver.
あまりにアレンジが効きすぎてギターリフが鳴るまで完全新曲だと思っていた。冒頭のシャウトからジャングリーなブレイクビーツが挿入された瞬間テンション上がりまくり。過去の名曲Broken Receiverを大きく更新したようにも感じるし、Squarepusher風というか、古いB級SFアクションで光線銃を片手に敵戦艦のダクトに潜入していくシーンに使われそうなレトロで怪しげな魅力が満載。他にも良曲が多数あることから意見は様々だと思いますが、シンプルに1番ゾクゾクきたので私はこの曲をベストトラックに推します。最高!
 
#10 Passive(★★★★)
Sonic Youth風の乾いたバッキングギターが特徴の8ビートショートチューン。作中最もストレートなロックサウンド。小難しいことはしなくてもシンプルにカッコいい曲が作れるんだぜと言わんばかりのある意味作曲能力の高さが際立つ楽曲。アウトロのギターで盛り上げあっさり終わる感じが潔くて好印象。
 
#11 New Life(★★★★☆)
本編ラストを飾るミドルテンポナンバー。ありそうで無かったタイプの曲。展開が面白く、加速すんの?しないの?どうすんの?みたいな感じで終始リズムで遊び最後は冒頭曲Superiorのフレーズを織り混ぜ爽やかに閉幕。現在のバンドのムードを表す未来へのポジティブさを感じる。リリーズのアルバムラスト曲は名曲揃いなんですが今回も案の定、でしたね◎
 
 
アルバム総評
 
Lillies and Remains/Superior(★★★★★)
 
さてアルバムの総評ですが、文句なし。文句なしの最高評価です。前置きとして過去アルバムの変遷を先に書くと、
ソリッド&ダークな1st Part Of Grace
ストレンジ&エッジーな2nd Transpersonal
リラックス&ノスタルジー
3rd Romanticism
を経て今作4th Superiorに至りました。
 
個人的には1st、2nd時期のスピード感、緊張感に満ちた楽曲が好みでしたので、前作Romanticismは良作ではあったものの、やや物足りなさも否めないといった印象でした。
今作のリリースが発表され、期待と同時にあの頃の尖ったリリーズはもう聴けないのかな…と一抹の不安を抱えていましたが、蓋を開けてみればそんな思いも杞憂でしかなく、私が1番好きだった2ndをも軽々と超えて行ってしまったと感じました。
今作の特徴としては全体的にアップテンポの楽曲が多くダレるポイントが極めて少ないということと、初期のスピード感やキレを取り戻しそこからさらにリミッターを取っ払い振り切った解放感を感じる事が出来るという点です。
前作もリラックス由来の解放感はあったのですが、エネルギーとしてはあくまでも低出力。しかし今作はアクセルベタ踏みフルスロットルな出力を持ってアグレッシブに解放のカタルシスを提供してくれています。
 

 
楽曲の幅も大きく広がり音選び、音作り、各アレンジどれを取っても非常に多彩で上質。アルバムタイトルであるSuperiorという言葉を体現するが如く極めて高クオリティなアルバムに仕上がっており、過去最高傑作と呼んで全く差し支えない出来栄えかと思います。
前作から9年という期間が空き、当時1歳だったうちの長男が10歳になってしまいましたwが、このバンドが好きで良かったなと心の底から思える作品です。ありがとう、Lillies and Remains。
 
 
 
 
 
 
終わりに
 
以下は完全な主観、憶測混じりの個人的な思いになります。
今回素晴らしいアルバムを提供してくれたL&Rですが結成から現在に至るまで様々な紆余曲折があったことかと思います。
結成当初、Kent氏が海外のチャートに普通に食い込むバンドになりたいと語っていたと思いますが、結果としてその野望は実現に至っておらず、現在は社会人生活、音楽活動と二足の草鞋だと思われます。ただそれはバンドの実力不足というよりはマスにウケにくいクールな音楽性(Interpolが日本人にウケないような感じ)、生まれや運や巡り合わせに依る部分が大きかったのではないでしょうか。個人的には、デビューEPの頃から海外のトップバンドと比べても全く遜色ない楽曲のクオリティを持っていると感じており、今も尚その思いは不変です。高い志、センスを持ち併せながらも、なかなか正当な評価・人気を獲得出来ず次第に活動ペースが低下していく様に、ファンとして悔しさ、やるせなさを抱いていた時期もありました。
しかし結果として商業主義に走らず自らの作りたい楽曲を思うがままに、社会生活と並行しマイペースに活動するよう至ったことは、L&R、リスナー双方にとって決して悪くなく、寧ろ相当に良い現在地なのではないかと感じています。大衆ウケせずとも決して憂うことはなく良いものは良い、やりたいから音楽をやる。もうただそれだけで良いのではないかと。長くなりましたがこれからのL&Rの活動を引き続き楽しみにしております。
 
邪ッッッ!!!